遺言・遺産分割  /  相続登記・生前贈与

 

Ⅰ.遺言・遺産分割

 

相続が争族にならない為にも遺言をする事をお勧めします。
亡くなられた方が不動産を所有していた場合、相続人への名義変更が必要になります。
通常、相続登記をする際、被相続人の12歳頃からの戸籍を全部取り寄せ、現存する法定相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議書には、法定相続人全員の実印による捺印、印鑑証明書を添付します。
よく起こるトラブル事例として、

下記、相続関係説明図  ①or② の B・C と E、
③ のBとDは全く面識がないか、or  対立関係にある場合もあります。
実印をもらう事が困難な場合は、家庭裁判所の調停や審判を経なければならなくなり、手続が長引きます。
遺言があれば戸籍の調査・収集も不要となり、遺言により財産を相続する事となった人は、他の法定相続人の了承を得なくても相続登記が可能です。
法定相続人ではない①図のD内縁の妻に、相続財産を与える事もできます。


B妻=A被相続人ーD内縁の妻
         

  C              E(Aが生前or遺言で認知)



B妻=A被相続人=D前妻
  │        │
  C              E(前妻との間の子)


③     _______  
               │
B妻=②A被相続人    ①C(Aの弟)
              │
              D
(①・②の順に死亡。DはCの代襲相続人)

  
遺言の種類には、自筆証書遺言・公正証書遺言等がありますが、 通常、家庭裁判所の検認手続が不要で、改竄・紛失の恐れのない公正証書遺言をお勧めしています。
自筆証書遺言の場合、遺言者が日付・全文を自書し、署名・捺印が不可欠ですが、 御本人のみの判断で作成される為、検認の際、物件の特定が不十分であったり、ご夫婦連名で作成された為、無効となる事も多いからです。
そのような場合は、法定相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
もし、身内の中に音信不通の方がいれば、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、管理人を含めて分割協議をする事になります。
無用のトラブル・時間と費用の浪費・お世話になった人に財産を受け継いでもらう為にも公正証書遺言がベターです。
なお、公正証書遺言作成の際は、証人(親族以外)2名の立会いが必要です。

 

 

 Ⅱ.相続登記
 
公正証書遺言をしておくと、安心して相続登記ができます。
公正証書遺言作成の際、証人(親族以外)2名の立会いを要しますが、司法書士が証人となり、遺言執行者として相続登記まで、すべてを代行します。

ところで、相続登記は、「相続発生後、何日以内にしなければならない。」というように法定されたものではありません。
しかし、故人名義の不動産を処分 or その不動産を担保に融資を受ける場合、相続登記が不可欠となります。
もし、不動産の所有者がひいおじいさんの名義のままだとすると、どうなるでしょうか?
相続人はネズミ算式に増えていきます。つまり、遺産分割協議に参加すべき人がどんどん増えていきます。
お亡くなりになってすぐに相続登記を済ませておけば簡単だったのに、時間の経過とともに顔も知らない者同士が法定相続人となって紛争が生じ、最悪のケースだと何年間も裁判をしなければならなくなります。
たとえ、あなたが将来その不動産を売却する予定がない場合であっても、あなたのお子さんなどの次の世代にとっては“いい迷惑”です。
悲惨な結果を招かない為にも、もし自分名義にする不動産があるのであれば、今の内に手続きをする事をお勧めします。


Ⅲ.生前贈与(配偶者に対する居住用不動産の贈与)

相続税の節税を考える時、生前贈与で相続時の相続財産を少なくする方法があります。
下記の要件を満たす配偶者間で行われた贈与については、2000万円までの控除があるという規定です。
この規定を活用して、父親名義のみの土地(建物は時が経てば価値がさがるので、土地のみ贈与する方が良い)を、母親へ2000万円分の「所有権一部移転登記」をする方法です。
財産を父の亡くなった時、母の亡くなった時、との2回に分けて相続する事で、相続税の基礎控除(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)や 税率の低い部分の適用が可能になり節税につながります。
しかし、配偶者の双方に財産がある時は、贈与を受けた配偶者が亡くなった時、かえって相続税額が多くなってしまわないか検討する必要があります。

・婚姻期間が20年以上の配偶者間の贈与で、過去にこの特例を受けていない事
・贈与した財産が居住用不動産で、贈与した年の翌年の3月15日までに居住し、その後も引き続き

    居住する見込みである事
・贈与税の申告をする事